「受け継ぐもの」 カトリック新聞 2014年9月21日号 (カトリック新聞社)

カトリック新聞 2014年9月21日号 (カトリック新聞社)に寄稿した記事を転載しました。
コロンビアの太平洋岸の港町トゥマコで開館した歴史記録館にまつわるお話です。

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「受け継ぐもの」

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相棒のドラさんと食事をするシスター・ガビ(右側)。快活に生きる姿に多くの人が魅かれた



2013年9月、コロンビア南西部、太平洋岸の都市トゥマコで、国内紛争・暴力による犠牲者を記録した「歴史記録館」が開館した。

開館時、トゥマコのカトリック教会所属のシスター・ガビさん(64)は、「暴力に負けないためには、決して沈黙してはいけない。行動し続けなければいけない」と、記録館の意味を語った。

内部に展示されている285人の犠牲者の顔写真は、およそ10年前から、カトリック教会による慈善団体「パストラル・ソシアル」の呼びかけに遺族が答え、持ち寄られたものだ。壁面に隙間なく並べられた写真には、名前と生年月日、殺害、または誘拐された日付が記されている。女性、男性、幼い子ども、深いしわを刻む年配者、多様な人々がいる。彼らはどんな人生を送ったのか。開館の日、訪れた多くの人は写真に向き合い、犠牲者から向けられる視線に思いを巡らせた。

トゥマコは太平洋側第二の国際貿易港である一方、麻薬の積出港になっているといわれ、さまざまな武装組織が勢力を争い、抗争やテロに巻き込まれる人が後を絶たない。2001年からの11年間に2000人以上が犠牲となり、5万6000人以上が避難民化したといわれる。

歴史記録館開館は、トゥマコで毎年開かれる「平和週間」に合わせられた。これは、01年に暗殺されたシスター・ジョランダさんの命日に行われる。

ジョランダさんは、トゥマコ周辺で不当に農地を奪う資本家から、貧しいアフリカ系住民たちの生活を守るため前面に立ち争った。その中で、資本家が放つ殺し屋に銃殺された。

ジョランダさんの仲間だったのが、シスター・ガビさん。彼女はジョランダさんの遺志を継ぎ、記錄館建設を夢見た一人。1950年ドイツで産まれたガビさんは、強い好奇心から27歳でコロンビアに来た。

私はガビさんと、内陸の先住民族を取材中に知り合った。彼女は辺境を丁寧に回り、人々の声に耳を傾けていた。いつも大好きなタバコを吹かし、大きな声で快活に笑い話す。コロンビアを愛し、多くの人から愛されていた。

そんな彼女から私は、平和週間中にひらかれるイベントの写真撮影を頼まれた。「泊まる場所は心配ないよ。うちに泊まればいい」と言ってくれた。

自宅に泊めてもらった4日間、毎晩2階のバルコニーでビールを飲み、いろいろな方向に飛んで行く話を楽しんだ。その中で、ガビさんの記錄館への思いを聞き、また私には「君は、君の思うことをやりきりなさい」と言ってくれた。

しかし、突然、彼女は帰らぬ人となった。心筋梗塞。葬儀に行くと、棺の中のガビさんは穏やかに目を閉じていた。早すぎる死を周囲の人は悔やんだが、夢見た記録館完成を見届け、大好きなコロンビアでたくさんの友人に見送られる彼女の人生は、幸せだったのかもしれない。

歴史記録館は、多くの犠牲者の遺志がガビさんをはじめ、生きる人を動かし作られた。

「暴力に負けないためには、沈黙してはならない。行動し続けなければいけない」「君は、君の思うことをやり切りなさい」というガビさんに言われた言葉は、私の中で強い熱を放つ。この熱が、彼女も受け継いだバトンなのだろうか。

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