コロンビア先住民族-3

3・伝統的農業と新自由主義経済


 コミュニティーで生活する先住民族は農業を経済の中心としている。彼らの農業は家族単位で畑を持ち、農薬、化学肥料を使用しない。大規模に生産している大農場とは対照的だ。
 「白人(大土地所有者)は土地を殺している」という言葉を聞いた。先住民族の自然観がよく表れている。大農場では化学肥料を使い、農薬を空中から散布している。それによって伝統的な農法で育てるよりもより早く効率的に収穫することができる。しかし、それによって土地は確実に痩せていく。土を手にとってみればその違いがよくわかる。山で感じた土臭さを大農場では感じることができない。
 先住民族は大地との繋がりを重要視している。人間は自然の一部であり、自然がなければ生きることができない。大地に無理をさせても結局は人間にそれが返ってくる。農薬、化学肥料を使わなくても同じ場所を長年使用すれば、その土地は自力を失う。しかし、それはいくつかの畑を交互に使い土地を休ませることで回復することができる。四季のない地域であっても、毎年決まった時期に種をまき、収穫を迎える。そういった自然の流れの中で作物を育てている。
 主な収入源となっているコーヒーにおいても、農薬、化学肥料を使うことはない。山の急斜面に広がるコーヒー畑では除草剤を使わないので、すぐにコーヒーの木が隠れてしまうくらい他の植物が生茂る。早朝から夕方まで家族が一列になって、斜面にしがみつく様にして雑草を刈り取っていく。決して楽な作業ではない。苗を植えてから収穫まで三年がかかる。大農場ではこれが一年で収穫することができるらしい。
 山ではほかにトウコロコシ、プラタノ(バナナ)、フリホール(インゲン豆)、ユカ芋、ジャガイモ、ニンジン、ネギ、サトウキビと言った土地に根付いた作物が作られている。アンデスが原産のジャガイモは、その種類の豊富さに驚く。これらは自分たちの食べる分と、市場で売り現金収入に当てられる。
 しかし、伝統的な農法に頼る彼らの農業の置かれている状況はとても厳しい。今アメリカを中心とした先進国によって推し進められている新自由主義経済によって、生産効率を求め遺伝子組み換えされた種、大量生産された安価な作物が流れ込み、農作物の価格が崩れ、土地に古くからある多様で自然に根ざしたものは競争することができない。農業を生活の糧とすることがますます困難になっている。こういった背景の中、麻薬の原料としてコカ、ケシの栽培に手をつける農家がいる。これについては、麻薬を資金源とするゲリラや軍事組織の存在があり一概には言えないが、農業が置かれている現状も大きな要因となっている。まとまった収入源として期待されるコーヒーは年間に二度収穫できる。これに対しコカは三度の収穫期を持つ。そして価格変動の大きなコーヒーに比べ安定しているコカは、それだけでも生活する上で大きな魅力となる。コカは実入りが多く安定している。しかし末端の農家の下に入る収入は、それだけで一つの家族が満足に暮らせると言う額ではない。他に比べればよいと言う程度だ。一度コカ栽培を始めると、それまで作ってきた他の作物を放棄しそこにコカ植えていく。コカ農家はそれが良い事だとは思ってはいない。後ろめたさを感じながらも生活する上で手放すことができない。軍や警察に見つかれば根こそぎ取り除かれていくが、それでもまたその場所にコカを植えていく。
 
 コロンビア産コカインの一番のお得意様はアメリカだ。アメリカはコロンビアの麻薬撲滅のために大量の物資、資金を提供している。しかし、そのアメリカが推し進める新自由主義経済によって先住民族の農業は成り立たなくなろうとしている。
 先住民族にとって農業は社会の中心にあるものだ。その問題は、現金収入を得るということ以外に、彼らのアイデンティティーにかかわる問題であるとも言える。
                                                             ~つづく
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